時間だけが消えた…自作ホームページの落とし穴

はじめに:なぜ自作ホームページに挑戦するのか
「業者に頼むと高いし、今どきは無料ツールも充実しているし…」。そう考えて、自作でホームページ制作に挑む企業や個人事業主は少なくありません。
ところが実際には、「3ヶ月かけて作ったのに、誰にも見られていない」、「結局どこを直せばいいのか分からず更新が止まった」など、“時間だけが消えた”という後悔の声が多く聞かれます。
本記事では、自作ホームページに潜む典型的な落とし穴とその改善策について、実例を交えながら解説します。
なぜ「自作」が選ばれるのか
コストを抑えられるという誤解
初期費用がほぼゼロで済むという理由から、自作に踏み切る人が多いですが、実際には別のコストが発生しています。それは時間と学習コストです。
たとえば、ある飲食店のオーナーは、メニュー紹介サイトを自作しようとして3ヶ月かけて作成。しかし、デザインが崩れてしまい修正に追われ、最終的に知人のデザイナーに依頼して作り直すことになりました。
「自分でやれば自由にできる」と思ったけど…
テンプレートやノーコードツールの登場で、初心者でも簡単に作れる印象がありますが、「思い通りにデザインする」ことと「成果を出せる設計にする」ことはまったく別物です。
自作サイトでよくある“5つの落とし穴”
1. 見た目重視で導線がない
多くの人が「おしゃれなデザイン」にこだわりますが、ユーザーがどこから入り、どこでアクションを起こすかという動線設計がなされていないケースが多数あります。
結果、訪問者は迷子になり、すぐに離脱してしまうのです。
2. 表示速度が遅くて離脱される
無料素材サイトから画像を多用した結果、1ページあたりの容量が非常に重くなり、スマホでの表示に10秒以上かかるといった事例も。
Googleは、表示速度の遅さをSEO評価のマイナス要因と明言しています。
3. モバイル対応がおざなり
PCでの見栄えばかりに集中し、スマホで見たときにボタンが小さくて押せない、文字が読みにくいなど、UI面で致命的な問題が放置されていることが多々あります。
4. SEO設定が抜けている
タイトルタグ・ディスクリプション・alt属性などの基本的なSEO項目が未設定で、Google検索に一切ヒットしないサイトも見受けられます。
「作れば見られる」は幻想です。適切な設定をしなければ、誰の目にも留まりません。
5. フォームやCTAが埋もれている
せっかく「お問い合わせ」フォームがあっても、リンクが見つけにくい場所にあったり、項目が多すぎたりすることで離脱が発生します。
「送信までの心理的負担」を減らす設計が求められます。
具体例:自作に失敗した事業者の声
ケース1:美容サロンのオーナー
無料ホームページ作成ツールでデザインを整えたが、Googleに全く表示されない。原因は「Googleサーチコンソール未登録」「meta情報未設定」だった。
SNSからの流入のみで集客限界を感じ、最終的に制作会社に依頼して、半年後に新規顧客が1.5倍に増加。
ケース2:地域密着型の建築会社
社長が自ら作成したWordPressサイト。スマホ対応がされておらず、若い顧客層に「古い会社っぽい」と敬遠された。
スマホファーストでリニューアルした結果、1年で問い合わせ数が3倍に増加。
時間だけが奪われる構造的な原因
設計・ライティング・デザイン…すべて“専門外”
自作にチャレンジする人の多くは、「作るスキル」だけでなく、「伝えるスキル」「売るスキル」も未経験です。
結果的に「何が悪いか分からないまま、更新もできず放置されるサイト」になるケースが大半です。
アップデートが続かず、情報が古くなる
日々の業務が忙しくなるにつれ、更新が止まり、“放置された感”のあるホームページになってしまいます。これは逆にブランド価値を毀損するリスクにもなります。
どうすればよかったのか?改善のヒント
まず「目的」から逆算する
ホームページはあくまで手段です。目的が「問い合わせ数の増加」なのか、「求人応募」なのかによって構成や導線は変わります。
目的が曖昧なまま作ると、すべてが空回りします。
初期構築はプロに、運用は自社に
「最初だけでもプロに頼んでおけばよかった」という声は非常に多いです。
構築だけ外注し、あとは自社で更新していくモデルが、最も費用対効果の高い選択と言えるでしょう。
診断ツールやアナリティクスを活用
アクセス状況や改善点を“見える化”することが、自作に取り組む上で重要です。
GoogleアナリティクスやPageSpeed Insightsなど、無料ツールでも一定の可視化が可能です。
まとめ:「無料で作る」には代償がある
「時間さえあればできる」は、非常に危うい考えです。
時間=人件費であり、成果の出ない作業に費やした時間は、コストそのものです。
ホームページは“作ること”が目的ではなく、“見られて、行動してもらう”ためのツールです。
「時間だけが消えた」と後悔しないために──今一度、目的と手段を冷静に見直してみてはいかがでしょうか。