スクロール率から読み解く“読まれるページ”の設計とは?

導入:なぜ「読まれ方」を分析する必要があるのか
近年、企業や個人事業者が保有するWebサイトの多くは、単に情報を掲載するだけでなく、閲覧者の行動(スクロール・クリック・滞在時間など)を計測し、改善に活かす動きが主流となっています。
中でも「スクロール率」は、ユーザーがどの程度ページを読み進めたかを把握するための代表的な指標として活用されています。Googleが公表する『UX Playbook for Lead Generation』でも、ファーストビュー(表示直後の画面)で判断される情報の質と、スクロールの継続率がコンバージョン(CV)に直結する要素として強調されています。
スクロール率とは:定義と活用目的
定義
スクロール率とは、Webページにアクセスしたユーザーが、ページ全体の中でどの位置までスクロールしたかを割合で示す指標です。たとえば「上部25%で離脱が多い」といったデータは、ファーストビュー以降が読まれていないことを意味します。
なぜ重要か?
Nielsen Norman Groupの研究によれば、ユーザーは読み進めるほど注意力が低下する傾向にあるため、重要情報が下部にあると伝わらないリスクがあります。したがって、ページ構成や情報の配置は、スクロール率の分析を踏まえて設計する必要があります。
スクロール行動に関する研究・調査結果
① ユーザーの視線は「F字型」に動く
ニールセン・ノーマン・グループの視線追跡調査では、多くのユーザーが左上から横方向に視線を走らせ、その後縦にスクロールしながら斜め読みをする「F字型パターン」の傾向があると報告されています。この視線行動に沿った情報設計が望まれます。
② ページの中段〜下段で急激に離脱率が上昇
Microsoft Researchが発表した調査では、ページ中段から下段にかけてのスクロール率は急激に減少する傾向があり、特にモバイル閲覧においてその傾向が強いとされています。重要情報の配置タイミングを見直す根拠となります。
③ モバイルでは「冒頭5秒以内」の判断が重要
Googleの『モバイルUXガイドライン(Mobile Site Design Best Practices)』では、ファーストビューと冒頭の5秒以内に価値が伝わらないページは、その後の滞在率・CV率ともに著しく低下することが示されています。
読まれるページに共通する3つの設計視点
1. ファーストビューで「要点」と「導線」を見せる
ページの最上部に「このページで何が得られるのか」を明示し、すぐに行動に移れるボタンやリンク(例:無料診断・資料DL)を設置することが、スクロールの起点をつくる鍵となります。
2. コンテンツを「情報ブロック」で分割する
総務省『令和5年版 情報通信白書』によると、スマートフォンでの閲覧時間は平均1コンテンツあたり2分未満です。長文が続くよりも、「見出し+短文+画像」などの情報ブロック単位に整理することで、視認性と読了率が向上します。
3. セクションごとに「マイクロCTA」を設ける
1ページに複数のアクション導線を用意することで、読者のモチベーションが高いポイントでコンバージョンを促せます。たとえば中盤で「診断はこちら」、末尾で「事例を見る」といった誘導が効果的です。
スクロールデータを活かす具体的な改善手法
- ヒートマップツール(例:Clarity, Hotjarなど)でページ下部の閲覧率を確認する
- 情報が読まれていない箇所は、要点を上位に移動する
- 長すぎる段落や画像は、折りたたみ式にして読みやすく整理
- CTAがある場所にスクロールが届いていない場合、上部または中段に配置し直す
まとめ:読者の行動を前提にした構成こそ「読まれる」ページをつくる
スクロール率の分析は、単なる数値の確認ではなく、「どこで読者が離脱しているのか」「どの情報が届いていないのか」という根本的な課題を可視化する手段です。ユーザーの行動パターンを把握し、それに応じた設計・レイアウトの改善を行うことで、情報の伝達効率とコンバージョン率は大きく向上します。
まずは自社のページが「最後まで読まれているか」を確認し、必要に応じて情報の配置やCTAの設置箇所を見直すことが、成果を上げるWeb運用の第一歩となります。